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2006.07.31 不思議な歌
見たことない通りを曲がって
迷いの森に 来た感じ

3分ほどの 短い物語
童話より 奇妙で
怖いけど 明るくて

言葉の並びが
パズルのよう
読み返しても つかめない
ピアノの音が
猫足のよう
そろっと 鍵盤を弾んでゆく

ずっと昔 耳にした
すっかり 忘れてた
いま蘇れば
あの頃よりも 不思議な歌
2006.07.30 空はいつも
同じ空だった
逆の季節の国で見る
月と太陽の数が 同じように
だから出会えて

青い空だった
ロケットの窓に映る
この地球が 青いように
だから笑顔になれて

広い空だった
なんにでもなれる
子供の夢が 広いように
だから遠くまで走れて

高い空だった
ただ揺れている
ベランダの風鈴が 高いように
だから 一緒に見上げて

空は 同じ
だからきっとまた

空は 青い
だから今も

空は 広い
だからもう一度

空は 高い
だから離れても
2006.07.29 友達
大きな肩から覗く
小さな丸顔
隣りに目を移せば
よく似た横顔

野菜を手に取り
選ぶ真剣さ
君から見れば
わたしもあんな真剣さ

久しぶりだね

なんて素敵
同じ時間に 同じ場所
なんて偶然
行き違って あたり前

またね

なんだか暖かい
耳に残る 明るい声
なんだか安心
元気そうに 笑う君

こんな たわいない一瞬に
心が緩んだ夕暮れ時
あなたは 冬生まれ
暑い季節も 長袖で
寒い季節も サングラス

青い空なんて 関係ない
海を泳ぐなんて 思い出だけ
だから
太陽の下なんて
似合わないと 思ってた

今 あなたが浮ぶ
雲のない 眩しく晴れた空に
波のない 光を集める海に

それでも やっぱり
肌を焦がす陽射しだけ
似合わないかな
なんて
ちょっと 可笑しくなる
2006.07.27 見つめても
髪から ぽたりと雫

指先に 落ちて

ゆるい灯り下

合わない瞳が 見つめる

黒い輪郭は ぼやけ

光もなく 遠い

ため息に 曇る顔

手で拭えば 同じように

だけど 触れたのは

わたしじゃなく

ひんやりした 鏡
2006.07.26 はじまり
まだ 少し湿り気を残す
部屋の床
青くなりきれない空が
ぼちぼちか と
起き上がる

やがて 雫の代わりに響く
セミの声
白くなりきれない雲が
わかってます と
準備する

さあ 太陽は真上に
水面をはしゃぎ
ブランコを熱し
チョコレートを溶かして

さあ わたしは真下で
素足になり
パラソルをさし
にじむ陽炎の中へ
2006.07.25 力を抜いて
さっさと片つけて
さっさとお湯に入って
さっさとおやすみ
だって わたしが出かける前に
起きて朝ご飯を
食べてもらわなきゃ
それが 君達の夏休みでも
だから
さっさと さっさと

のんびり食べて
のんびり呑んで
のんびり一緒にテレビ
だって わたしは明日お休み
ちょっと寝坊しても
なんとかなるさ
うふふ 君達の夏休みだもん
だから
のんびり のんびり
2006.07.24 今夜の空に
空は ひとりじめ
無機質な色のマントで
光を包む夜

この手を伸ばせば
この空と同じ色に
溶けこめるだろうか

この手を伸ばしても
この空と同じ色の
雨が伝うだけ

この目に見えなくても
この空はいつも遠く
瞬きを抱える
2006.07.23 葡萄のお酒
深い色をたたえた 冷たいグラス
とても自慢げに
その赤は
優しい意思を持つ 薔薇の蕾

心を緩く
舌に苦味を残す

遥かな土地で 生まれた葡萄
遥かな人に育てられ
眠り 生まれ変わる

遥かな土地で 目覚めた葡萄
遥かな人に注がれ
酔わせ 生まれ変わらせる

瓶の中で見た夢が
わたしのどこかに 残ればいいな
2006.07.22 戦って
戦って
がんばれる日
大丈夫と 強気な日もある

戦って
穏やかな日
負けていいと 流す日もある

心と気持ちは 別モノで
どっちを取っても
夜には 虚ろな息をはく

争わなくても
迫るものと戦う毎日
勝ちたいとか 負けたとか
思ってはいないのに

こんな自分でも 失うのが怖くて

明日もまた
見えない影に ポーズする
2006.07.21 遥かな想い
もし

あなたが風なら
わたしは
小さな手で握られた
風ぐるまになりたい

あなたが朝顔なら
わたしは
その薄紫を映された
水滴になりたい

あなたが鳥なら
わたしは
眠る池でそっと浮く
水草になりたい

だけど もし

あなたが星なら
わたしは
いつまでもここに立って
見上げていよう
2006.07.20 雨に祈る
そこは 小さな温泉郷
ひなびた谷間に
山の音だけが広がる箱庭

そこは 静かな無人駅
ゆっくり歩く
線路の跡が残るトンネル

そこは 大きな吊り橋
太陽の季節も
澄んだ風が吹きぬける川

汗と疲れに
あの日 ふらっと立ち寄り

台風に
あの後 橋はのみこまれ

続く雨に
今また 川が暴れだす

どうか 雨よ これ以上
願いを祈りにかえて
どうか 雨よ
2006.07.19 夏色スープ
野菜を並べて 考える
今夜はこれを どうしよう

玉ねぎ 人参 じゃがいもくん
いつの季節も 顔なじみ

頭に浮ぶ あっさり系
だけどそれって どうなのよ

夏の身体を暖める
さっぱりメニューはないかしら

そうだ 真っ赤なトマトをひとつ
ミネストローネを作りましょう

余ったキャベツもあったはず
野菜満載 そうしよう

全部刻んで サイコロ形
炒めて スープとマカロニを

ちょっと酸っぱい いい匂い
とろりとなったら 出来上がり

あとは みんなでおいしくね
汗をかきかき 夏色スープ
2006.07.18 晴れを待つ心
頭を枕に置いて 耳に伝わる雨の音
止まった空気の中 時計だけが動く

声のないプール
無表情な洗濯物
泣いてるように濡れたまま
傘だけがほくそえむ

そろそろ
明日天気になあれ

土も お腹いっぱい
乾いた空を 待っている
誰も ため息をひとつ
透明の朝が 見たくて

だけどあと少しなら
絶え間ない雫で 今夜は夢を

だからそろそろ
明日天気になあれ
2006.07.17 毎日
ある日 砂漠を歩いていた
砂に足をとられ
すっぽりがぶったベールが
風に流される
乾いた口で 噛みしめる時の砂

ある日 薔薇の香りに包まれた
手を伸ばした花に
隠れるような棘があっても
痛みすら感じない
うっとりと さまよう心

ある日 雨に打たれていた
煙ってかすむ町で
傘を持たない人が
淡い七色を探す
果てしなく思える 沈んだ空

そんなくり返しの 毎日を生きる
新しいベールは 手に入るだろうか
指を伝う赤は 消えたのだろうか
いつか 虹を見つけられるだろうか

そんなくり返しで
きっとみんなも 毎日を
ヒマワリは 散らばる
燃えすぎた太陽から
この地上に

ヒマワリは 忘れない
雲に隠れた日も
空で輝く存在を

ヒマワリは 嬉しい
あつく光を浴びるほど
花開く意味を感じて

ヒマワリは 背伸びする
見上げる子供のように
精一杯近づこうと

太陽は 黙って照らし続ける
そこに頬を染めた
黄色い花の咲く限り
2006.07.15 暖かい雨
追いかけてくる 石色の雲

駆け急ぐ 緑の自転車

どんよりした わたしの心

落ちてくる 大粒の雫

染めてゆく デニムの足

かすんできた わたしの目

交じり合う 雨と涙


夏の雨は 暖かい
涙と同じ 暖かさ
2006.07.14 蜃気楼
ゆらゆらと漂う
すりガラスの景色
どこまでも
ここから 遥か遠くの
違う世界に繋がる気がして

歩いても 行き着けず
見渡せば振り返った先に

蜃気楼は 真昼の夢

ひたすらに集める
紅く小さな石
手に余るほど
いつか 丸い一つの
大きなルビーになると信じて

握っても 零れ落ち
最後の欠片こそ輝きと知る

真昼の夢は 蜃気楼
2006.07.13 君と昼ごはん
はじめは 小さなスプーン
たった一さじを ゆっくりと

もぐもぐ静か
ニッコリおいしい
飽きてくると かき混ぜたり
笑って 怒って
大騒ぎしたお昼ごはん

今は 大きな手
たった3口で あっという間に

もぐもぐ静か
ニッコリおいしい
飽きることもなく 最後まで
笑って 喋って
穏やかなお昼ごはん

あと何回あるのかな
二人きりで お昼ごはん
変わらず好きな 焼き立てパン
頬ばる君に 幼い顔が見え隠れ
2006.07.12 それだけで
南風に押される ふくれっ面の雲
まとわりつく 甘えるような
湿り気を引き連れて
東へ 東へ

ヒラヒラと
ヘチマの葉は手を広げ
チュンチュンと
鳥たちはお喋りを始め
パタパタと
洗濯物は元気を取り戻す

空に現われた青さ
ただそれだけで 輝く世界

やがて薄紅の空
ただそれだけで ふっと笑顔
2006.07.11 二人の波動
きっと 道は同じなんだ
見えている色が 違うだけ
見たい花が
違うだけのこと

心の波動
時を刻みながら
向き合うこともなく
ただここで 漂うだろう
掴んだ欠片を
手から離せないまま

たぶん この先もそうなんだ
歩く速さが 違うだけ
歩き疲れて眠る場所が
違うだけのこと

時間の波動
すっかり見失った姿を
探すこともなく
ただここを 通り過ぎるだろう
昔の景色など
片隅に追いやったまま

だけど 同じ道なんだ
手が届かないくらい
広い道だけのこと
2006.07.10 目覚まし
時計を見る
アラームは5時30分
明け空が 移ろう季節を
いち早く映す
 
春は 柔らかなミルクティー
夏は 早起きな透明の羽
秋は 広がる蒼いビー玉
冬は 夜がとどまる黒い森

眠いため息をこぼす中
見つけたひとつの ご褒美な気がして


時計を合わせる
アラームは7時
起きなくてよくなった時間に
嬉しさと 懐かしさと

明日から
少し遅い朝は 何色だろうか
2006.07.09 変化
髪を 切りましょう
束ねてもいいけれど
乾きやすくなるように

窓を 開けましょう
ガラス越しの光より
鮮やかな色が入るように

水を あげましょう
行き場のない雨を捨てたら
葉っぱも輝くように

自転車で でかけましょう
タイヤに空気を入れて
転がっていくように

西へ 曲がりましょう
もし迷ってしまっても
また誰かと出会えるように

家に 帰りましょう
変わらない大事な場所を
愛しむように
少しだけ
昨日と違う自分になって
2006.07.08 試合終了
ホイッスルが 鳴り響く

華やかな場所から遠い
小さな町
気にも留まらないほど
小さなグラウンド

ひたすら走り 追い守ることで
力をぶつけたイレブン
追い風は 向こう側

立ち上がり 声を送ることで
共に走ろうとした者たち
最後まで そのままに

一つの時代が終わる
照らし続けた 太陽の下で
一つの時代の輝き
次に蹴りだすボールは 明日へ

たくさんの汗と それぞれの涙に
大きな拍手を

そっと 悔しさを隠した後ろ姿に
ささやかな乾杯を
2006.07.07 手ざわり
覚めてゆく中で
目を閉じたまま
握りしめる手のひら
力いっぱい ぎゅっと

残っている
それは とてもはっきりした
あなたの手ざわり

なぜだろう
ただの一度も なかったのに
本物のあなたに
触れられることなんて

頭がビデオを繰り返す

遠くていい
だけど
流れる淡い雲じゃなく
静かな深い海じゃなく
懐かしい過去じゃなく
はるかな未来じゃなく

夢でいい
今も
同じこの空の下にいる
そう感じた瞬間が
嬉しかったから
深い緑の間から
ハッとする白い顔で
微笑みかけた
派手に咲き広がると
競い合う匂いを
遠くまで放つ

零れそうな大きさと
息苦しいほどの甘さ
いつしか 誰も
足早に通り過ぎる

やがて うなだれて丸く
ぼとりと落ちた黄色い花

たった一枚の花びらすら
綿毛のように 空を舞えない
桜のように 川を流れてゆけない
だけど咲く
だから咲く
来年も この場所に
2006.07.05 不機嫌な空
まるで 止まっているよう
顔を覆って座り込み
考えている空

声が聞こえても
鳥の姿は見えない
ため息を吹き込んで
風は浮かない匂い

時々 ニヤリと笑う
叫びだしてやろうか と
大声で泣いてやろうか と

悪戯したくて 驚かせるの
綺麗にしたくて 怒るの

でも もう少し
あと少しだけ そのまま
小さな傘が
家に辿りつくまで
2006.07.04
風は乗せる
桜の花びらを 生きてる音を

風は流す
過ぎる季節を ピンクの雲を

風は押す
坂道の自転車を わたしの背中を

風は運ぶ
みんなの想いを だれかの言葉を

白いカーテンの姿を借りて
窓でためらう風
触れると 慌てて
肩をなでていった

いつかこの風が 遠く
あなたを通り過ぎるなら
たった一言 届けてほしい
『ありがとう』
見えなくても 笑顔で声に出す
『ありがとう』
2006.07.03 歌う
歌える心があるって いいな
誰かやなにかを想う言葉
あなたの心で育ちながら
放たれる時を待っている

歌える声があるって いいな
音とリズムを持つ言葉
あなたの声で漂いながら
求める手を捜している

歌を聴く耳があるって いいな
心と声から生まれた言葉
わたしの耳に問いかけながら
舞い降りてきた

あなたの歌が 今日も響く
耳に 心に
そしてわたしの声となって
2006.07.02 麦酒
ぽくん ぽくん シュワワワ

はじける泡がささやく
とても控え目な音
聞き逃すまいと
黙って 耳を傾ける

透明のグラス一面
二色に輝く麦畑
長く眺められることもなく
ピリピリと騒ぎながら
喉を駆け抜けた

ビールから始まる夜が
満たされてゆく
なにより至福の一杯も
やがて 呑むほどに苦い

おかしいね
なんだか あなたとわたしみたいで
おかしいね
2006.07.01 土曜日
大好きだった
土曜日の帰り道
お腹が減っていても
のんびり ゆったり
帰った道

雨の日なら
流れる水に 長靴をさらしてみたり
せき止める葉っぱを つついてみたり
傘があっても ないのと同じ
濡れるのが楽しくて
雨の景色が特別で

晴れた日なら
ふざけ合い 違う道を通ってみたり
半透明の下敷きで 太陽を見てみたり
夏の陽射しなんて へっちゃら
みんなの汗がおかしくて
空の眩しさが嬉しくて

いつからか
土曜日は ただのお休み
そして わたしは
帰り道を急いでいる
濡れないように
暑さを避けるように